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−相模鉄道 9000系−日立にショックを与えた東急車輌

−鉄道車両写真集−
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相模鉄道 9000系 10両編成 編成表
←横浜@                海老名、湘南台I→
クハ9700-モハ9100-モハ9200-サハ9600-モハ9100
-モハ9200-サハ9600-モハ9100-モハ9200-クハ9500
(Tc2-M1-M2-T2-Ms1-M2-T1-Ms1-M2-Tc1)
9701〜07F Ms1はセミクロスシート車
参考文献 私鉄車両編成表 ’07年版
相模鉄道 9000系 9706 撮影;2006.8 かしわ台

相模鉄道9000系は6000系を置き換えるため1993〜2001年にかけて製造されたVVVFインバーター制御(GTO)車です。
その総数は、10連×7編成の70両。
珍車として取り上げるのには,数が多すぎますよね。
でも、私はこの9000系を珍車として取り上げました。
まず、そのきっかけからお話しします。
それは9000系が登場する3年前に8000系が登場していて、9000系はそれと並行して増備されている
ということに興味をひかれたからです。

そんなのちっとも珍しくないとおっしゃるかもしれません。
確かに国鉄では201系とほぼ同時期に203系が導入されています。
また、座席指定特急などというようなこれまた特殊な用途の系列と一般車の系列と2系列が同時期に製造されるということもあります。
しかし、汎用の201系に対し、203系は営団地下鉄千代田線直通という特殊な用途で製造されたものです。
言わずもがな、相鉄はどことも相互乗り入れを行っていませんし、
また座席指定の特急が走っているわけでもないのです。
つまり8000系も9000系も同じ路線を同じように一般車として使用されるのです。
加えて、ともに直角カルダン駆動車です。
外から見えるディスクブレーキ付き台車を採用するなど、双方とも他の鉄道会社にない相鉄らしい特長をともに残しているのです。

いったい何がどう違うというのでしょうか。

画像をご覧ください。
9000系は車体全体を白く塗装しており、また先頭車の連結器には車体と同色のカバーをかぶせるなど、8000系とは印象が大きく違っています。
でも、8000系と同じくアルミ車体であるという点は同じですし、
8000系のデザインをあえて変更しなければならないという必然性は感じられません。

あと違うといえば、冷房装置が違いますね。
集中式ばかり採用してきた相鉄でしたが、9000系では集約分散式を初めて採用しました。
双方とも、メリットデメリットがあります。そんなことで形式を区別する鉄道会社を私は知りません。

ここで8000系と9000系について おさらいしておきます。
8000系も9000系と同様、6000系の置き換えを目的に開発された車両です。
前述したとおり見た目は従来の新7000系と大きく変化しています。
しかし、新7000系で採用されたセミクロスシートを8000系は採用。
セミクロスシート車は新7000系最終増備編成と同じく、各編成に2両ずつ(5号車と8号車)組み込みました。
これを9000系も引き継いでいます。
制御装置について、8000系は新7000系の1C4M制御と異なり、1C8M制御としています。
また6M4Tとなり、新7000系の4M6Tより電動車の比率をUPしました。
これらもまた9000系は引き継いでいます。
8000系も9000系も、新7000系と同じく、VVVFインバータ制御(GTO)を採用している点も同じです。
加えて駆動方式は、相鉄のDNAを引き継いだ直角カルダン。
外から見えるディスクブレーキをもつ台車も同様、かたくなに相鉄がこだわり抜いているスタイルです。
つまり私から見れば、8000系も9000系も、ともにキープコンセプトです。

−鉄道車両写真集−
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相模鉄道 8000系 10両編成 編成表
←横浜@                海老名、湘南台I→
クハ8700-モハ8100-モハ8200-サハ8600-モハ8100
-モハ8200-サハ8600-モハ8100-モハ8200-クハ8500
(Tc2-M1-M2-T2-Ms1-M2-T1-Ms1-M2-Tc1)
8701〜137F Ms1はセミクロスシート車
参考文献 私鉄車両編成表 ’07年版
相模鉄道 8000系 8509 撮影;2006.8 かしわ台

根本的な違いはなんでしょうか?
それは、8000系が日立製作所で製造されているのに対し、9000系が東急車輌で製造されているということです。

6000系以来、相模鉄道の新規製造車といえば、発注先は日立製作所でした。
東急車輌については、2100系や5000系などの改造車を受注していたに過ぎません。
9000系が登場した90年代当初、折しもバブル崩壊で世の中は先が見通せなくなりました。
鉄道業界も例外ではなく、乗客増にも陰りが出てきました。
ずっと右肩上がりであった、相模鉄道でさえそうです。
東急車輌にしても、改造車の受注だけに甘んじてはいられないのです。
日立製作所がやったことは、自分たちでもやれる。
それ以上の提案も条件も飲めるということを相模鉄道に示し、鉄道車両メーカーとしての生き残りをかけた挑戦の証が9000系ではなかったか。
と私には思えるのです。

一方、東急車輌で製造されることになる9000系の存在は、日立製作所に大きなショックを与えたことは想像に難くないところです。
鉄道車両メーカーとして、ひたすらユーザーである相模鉄道の様々な要求に応え、他社では振り返られることのなかった技術、
すなわち、直角カルダン、ヒートポンプ、そしてディスクブレーキ台車etc…を二人三脚で熟成させてきたのです。
新造車両を一手に引き受けるという見返りは決して安いものではなかったはずです。
それだけに長年連れ添ってきた恋人に突然、さよならを突きつけられたようなものではなかったか。とさえ思えるのです。

しかし、この相鉄ショックが、鉄道車両メーカー日立製作所を大きく変えてゆくことになったのではないでしょうか。
この後、日立製作所は、オーダーメイドという受け身のスタイルから脱却。
自前の技術に磨きをかけ、新世代の鉄道車両を独自に提案。
これすなわち「A-train」 を売り込むという攻めのスタイルに転じることになります。
Aluminum(アルミ)、Advance(先進)、Amenity(快適)、Ability(性能)の4つの A を冠したA-trainは車両のつくり方を一から見直しました。
A-trainでは、アルミ素材を骨組みのいらないダブルスキン構造にし、
一体成形されたマウンティングレールに,自立型モジュールインテリアをボルトで取り付けるという車体加工の工程をとります。
このことで効率化、自動化、省力化を図りました。
またFSW(摩擦攪拌(かくはん)接合)という独自の溶接技術により、ゆがみの少ない仕上がりを実現。
無塗装でも美しい車両を生み出したのです。
シンプルな構造は生産時の環境負荷を低減し、軽量な車両は走行時の省エネにもつながりました。
またアルミ自体、リサイクル性に優れたものです。
これら環境配慮への視点もアピールし、日立製作所はその販路を拡大してゆくことになります。

A-trainの第一号は、JR九州の815系です。1999年にデビューしました。
以後JR九州は、日立のA-trainを一般車のみならず、特急車にも導入します。
今や、西武の30000系や東武の50000系もそうです。
関西に目を向けてみると、阪急の9300系も日立のA-trainです。
思えば阪急には自前の鉄道車両メーカーともいえるアルナ工機が存在していました。
そんな阪急電鉄が、A-trainを導入し、アルナ工機は、今や路面電車(LRT)に活路を見いだそうとしています。
系列会社であってもそれを切り捨てる決断を阪急電鉄に促したA-trainの実力は半端ではないと思います。
21世紀の今、国内各地のほか英国、韓国、台湾で運行。海外にも雄飛する日立のA-train。

その力の源を私は他ならぬ東急車輌製の相鉄9000系に見るのです。

 参考文献 、「最近の鉄道車両 "A-train" (PDF) 」山田敏久氏・大場英資氏 、『日立評論』(2003年8月号)
        鉄道ピクトリアル 新車年鑑 1993年版 
No582/1991年版 No550
        相模鉄道 私鉄の車両20 復刻版2002年7月 ネコ パブリッシング



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