鉄道写真管理局 珍車ギャラリー
  京浜急行 2100系  2009/12/22UP
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デハ2101 Muc 1998年 東急車輌 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
18.170 2.830 4.027 33.0
駆動方式 制御器(電圧) モーター(kw) ギア比
WNカルダン SIBAS−32 KHM-2100
190×4
5.93
ブレーキ 定員(座席) 冷房機 台車(製造)
MBS-A 111(62) CU71G
三菱
TH2100−M

鉄道車両諸元表:鉄道ピクトリアル 新車年鑑 1998 No660 1998.10 
京急2100系      北品川駅 

時代を奏でるインバーター変調音−京急2100系−

ツリカケ電車のようにうなり声をあげて加速するその音には思わず感動してしまうものなのですが、
その音に思い入れがあるという鉄チャンは、それ相応の年齢の方と推察いたします。
新性能車でもその音には、それぞれ個性があり、
音だけで、その姿がイメージできる電車は私のお気に入りです。
例えば北急の8000系ポールスターなんかはいい例ですね。
北急8000系ポールスターをすぐにイメージできる方には、
「うんうん。」と頷いてもらえると思います。

さて、最近の電車はといいますと、インバーター制御が定番となっております。
インバーター電車は、制御器の周波数を変調させて加速してゆくのですが、
音程を変えながら動作するので、動作時に一定の音しか聞こえてこないチョッパ制御と違って、結構印象に残ります。

このインバーターの変調音を、技術者の方々は磁励音とか磁歪音とかいうそうです。
なんでも制御器からモーターに送られる3相交流の波形パターンが、
モーターの鉄心や制御器内部にあるアノードリアクトル(GTOサイリスタを保護するもの)
というものを振動させるために音が発生するのだそうです。

インバーターとは、直流電力を周波数などを制御した交流電力に変換する装置をいうのですが、
電車では誘導電動機というモーターを起動するために、直流を三相交流に(3回分タイミングをずらして)変換します。
そのとき直流を高速でオンオフをさせることで交流を作り出すのですが、
低速時はよりアナログに近い波形を作り出す必要があるのです。
そのためにはより細かく、オンオフを繰り返す、
つまりパルスのモードを高速化しなければなりません。
そこで、なぜこの音が段階的に上昇するのかというと、
スピードアップするにしたがって、
変換するパルスのモードを数回にわたって段階的に切り替えてゆくからなのです。
つまり、その切り替え時、オンオフのタイミング(チョッピング周波数またはスウィッチング周波数)が変化し、
その度に音が一旦低く感じられるようになるというわけです。

思い起こせば、新幹線でもインバーター制御となった300系などは
その変調音が、とりわけ大きく
新大阪駅の構内に、その音を響かせながら発車してゆくその姿は新時代の新幹線を実感させてくれたものです。

最近はより高速でスイッチングできる素子=IGBTを導入したり、パルスモードの変換タイミングを減らしたり、
振動音の原因であるアノードリアクトルというものをなくすとかいう改良がなされ、
変調音もずいぶんとおとなしくなってきたようです。

そんなわけで、
インバーター電車の変調音も、聞き込んでゆくと一応ではないことに気付かされます。
まさに音色はいろいろとあって、時代によりその音も変化してゆくものなのです。
JR東日本のE231系なんかは、マニアに「墜落変調」と呼ばれている気抜けする音です。
それでもよく聞いていると最後には気合いが入ってきてあれはあれでいいものです。

流れとしては電車の音は、どんどんおとなしくなってゆくわけですが、
それでも全くその音がなくなるということはないでしょう。

私にとって電車の音は、その時代を思い起こさせてくれるものでもあります。

ドイツ人の遊び心−メロディー変調−

さて、前述したように、とりわけインバーター電車登場した当時は、
この音が大きくて、これが、けっこう耳障りだとする人も多かったようです。
こうした声に応えるべく、音を少しでも小さくしようという工夫が見られるようになるのですが、
この機械音を耳障りのよいメロディーに変えてしまおうという電車が登場しました。
JR東日本の501系、そして京急2100系です。
ともに「ジーバス32(SIVAS_32)」という制御器を搭載しています。
音程を変えながら動作するのであれば、
これを心地よいメロディーにしてしまおうという発想です。
ちなみに、このデバイスをを作り出したのはドイツ、シーメンス社です。
ドイツ人の遊び心が、この装置を作り出したわけですが、
ドイツ人といえば、生真面目で無口な職人肌の人柄をイメージしていたので意外でした。
ちなみに私は、これだけでドイツの人々に対する印象までもが大きく変わってしまったほどです。

海外の技術をとりいれた電車

今回、お話の中心となるのは、この「ジーバス32」という制御器ということになりますから、
タイトルは、これを始めて導入したJR東日本の501系とすべきなんですが、
京急2100系の話題として取り上げました。なぜなら、
この2100系こそは、創業100年をむかえる京浜急行が、21世紀をむかえるにあたって、
フラッグシップとして製作した気合いの入った系列であるということにあります。
そんな2100系に外国製でもある「ジーバス32」が導入されたことを私は高く評価したいのです。
2100系では、制御器「ジーバス32」にとどまらず、モーター、蓄電池、コンプレッサーなども外国製で、
車内においても、座席はノルウェイ製、その表地はスウェーデン製のものを導入しています。

日本の鉄道は、高密度大量輸送という点で独自の発達進化を遂げており、
他国のものなど、あえて必要はないとも言えそうですが、
国内の市場はもう飽和状態であって、
鉄道車両会社は、各社とも厳しい競争に立たされています。
今後、海外に販路を求める為にも、
より安価で汎用性があるパーツ、あるいはデバイスを模索してゆく必要があります。
京浜急行電鉄が、海外から様々なパーツ、あるいはデバイスを導入したということは、
鉄道車両会社にとっても いい刺激になったのではないでしょうか。
制御器「ジーバス32」こそは、そのシンボル的存在に思えます。

メロディーを奏でる電車

メロディーを奏でる電車は、インバーター電車だけではありません。
名鉄にもあり、これはミュージックホーンと呼ばれています。
そういえばJR西日本の223系などにも同様のものが付いていますが、
これらはあくまで警笛の一種であって
無粋にパアーンと鳴らすよりはマシという発想ですね。

対して京急2100系のメロディー変調は、起動する度毎に奏でられるわけで、
鼻につく、もとい耳に付くという苦情もあったのでしょうか。
シーメンスのジーバス32を搭載する一連の車両以外に、
メロディー変調が広まることはありませんでした。

私は、あの京急2100系のスマートなフォルムを見る度に、
そしてあのメロディー変調を聞くに付け、
これからの鉄道につながる新たな息吹のようなものを感じるのですが、
そんな風に感じる人間は、まあ、いないのでしょうね…(-_-;)。

このごろ聞かずて、我恋にけり

万葉集には持統天皇のこんな和歌があります。

   否といえど強いる志斐のが強語り
        このごろ聞かずて、我恋にけり (万葉集巻三−236)

この和歌は「志斐のばあや」が、くどくどと何度も同じことを繰り言のようにいうのに閉口していた持統天皇が、
その小言を聞かなくなったとたん、寂しくなり
「また聞きたくなったわ。」という思いを和歌にしたものです。

残念ながら、関西にはメロディー変調を奏でる電車は存在しません。
あの腹が立つほどに耳についてしまったあの音をまた聞きたい。
という思いは関東の方には理解が出来ないことかもしれませんが、
京急電車を待つそのホームで、
「メロディー変調の電車がやってこないかなあ。」
と心待ちにしている私のような関西人がいたりするのです。
もちろん、わざわざこの音を聞くために上京するわけではありませんが、
運良くメロディー変調の電車に乗車できようものなら、
頭の中で思わず合唱してしまっているのです。

  ♪ ハーラホーレーヒーレーハァレェーーー…


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参考文献;鉄道ピクトリアル 「新車年鑑 1998」No660 1998.10 
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