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  JR西日本 キハ40形2027 「べるもんた」  
             撮影:2018年8月 城端 

「ちょうど良いくらいの小旅行。」-JR西日本キハ40形 べるもんた「ベル・モンターニュ・エ・メール」

べるもんた(正式名称ベル・モンターニュ・エ・メール)は
北陸新幹線と接続する新高岡駅を起点に 城端線・氷見線を走る観光列車です。
2015年10月より運行を開始しました。

見ての通り新車ではありません。
キハ40形(キハ40 2027)を金沢総合車両所において改造工事を行なった車両です。
車体塗色はダークグリーンとなり、
車体腰部・窓枠部分・前面下部のスカートにはメタリックゴールドがあしらわれています。
また、貫通扉と側面腰部には、ロゴマークが描かれぐっと高級感がでました。
車内には、沿線の伝統工芸品である「井波彫刻」が施された欄間や、
「高岡銅器」をイメージした吊り革などが目を引きます。
キハ40形の改造車とは思えない雰囲気です!
そのなかでも注目すべきは、拡大された固定窓。
それはあたかも額縁のようです。
そう、「べるもんた」は車窓の景色を絵画として楽しむ
「走るギャラリー」がコンセプトとなっているのです。

氷見線で富山湾を至近距離で眺めることのできる車体の側窓は、
そのまま城端線では立山連峰を望むことができます。
そうです。この車窓から「美しい山々と海」を望めることから、
フランス語の”Belles montagnes et mer”=「美しい山と海」を列車名としたのです。
さすがに長くて覚えにくいので、愛称名を「べるもんた」としていますが、
この名前の由来だけは押さえておきたいところです。

というわけで、特等席は、海側を望む座席となるでしょう。
窓沿いにしつらえられたテーブルにむけて配置されたカウンター席です。
反対側の山側には、中央部に2人掛けのクロスシートと
折り畳み式のテーブルを備えた4人掛けのボックスシートが並んでいます。
負け惜しみかもしれませんが、こちらから見た方が額縁越しになるので、
「走るギャラリー」を実感できます。

というわけでおわかりですね。私、「べるもんた」に乗ってきました。
ちなみに、私が指定券を入手したのは前日の夜、大船駅のみどりの窓口です。
キャンセル待ちでようやく空いた一席をゲットしました。
おもしろいことに「べるもんた」の車端部にはロングシートが配置されています。
最後の一席とはいえ、私にあてがわれた席はロングシートではありません。
「べるもんた」は全席指定席ですが、このロングシートは、
飛び込みの乗客も受け入れる余地があると言うことなのでしょう。
ちなみに、おしゃれなつり革まで設置されています。

それにしても、ロングシートにクロスシート。
加えて窓際には本物の飲食店のカウンターをおもわせる座席がずらり。
1台にこれほどのシートバリエーションを盛り込んだ車両は他には見られません。

「べるもんた」の楽しみは景色だけではありません。車内サービスです。
こちらの写真は「ぷち富山湾鮨セット」。*撮影 Dr K



なんと「べるもんた」の車内で寿司職人が握ってくれたものです。
寿司のネタが並んだ冷蔵ケースまであります。
かつてのビュフェ 「サハシ153」を思い出しました。
しっかりした料理を提供するのに「キシ」ではないのが残念です。
また「べるもんた」沿線の造り酒屋で醸された地酒の「飲み比べセット」もあります。
富山県は冷涼な気候と良質な水そして高品質の酒米を産する酒どころでもあるのです。

ほろ酔い気分で車窓に目をやると、沿線の方々が集まって列車に手を振ってくれています。
暗い車内の奥の方から手を振っても気づいてはもらえないかな。
と思いながらも、手を振りました。
人々とのふれあいと言うほどのものでもないかもしれません。
でも、無条件に心地良い思い出です。
乗客である私にとっては、もちろん初めて…そう一期一会なのです。



そんな光景を気づかせてくれたのが、マイク片手にガイドをされていた地元の女性でした。
運行日には毎回(二往復すなわち4回)、やって下さっているのだそうです。
皆さん、よく続くなあと思いました。

「べるもんた」は1両編成です。JR西日本の観光列車としてはコンパクトで、
定員はたった39名です。これだけのおもてなしをするのだから、
もう一両増結して、もっと定員を増やしても良いのになあと思っていた時のことです。

先ほどのガイドさんが、民謡を歌ってくださいました。
富山県民謡の「こきりこ節」です。
「こきりこ節」は、富山県の五箇山地方に伝わる古謡です。
意味こそ わかりませんでしたが、歌詞さえあれば…私でも歌える全国的にも有名な民謡です。

「こきりこ」とは放下師といわれる大道芸人が使用した竹の楽器で、
竹2本を指で回し打ち鳴らすものだそうです。
「こきりこの竹は七寸五分じゃ 長いは袖のかなかいじゃ」という歌詞は、
「七寸五分(約23cm)以上長いと かなかい(引っ掛かるの意)=邪魔になる。」
と、ものには適当な長さというものがあるのだと言うことを伝えています。

そうか。思えば、1両編成だからガイドさんの表情を見ながらお話も聞けるし、
2両編成だったらお寿司が間に合わないかもしれない。
高岡駅―氷見駅の距離は16.5キロ。所要時間は約30分。
高岡駅―城端駅の距離は29.9キロ。所要時間は約50分ですが、
「べるもんた」の起点は城端線の新高岡です。
氷見線も、城端線も 約40分あまり、
もうちょっと乗っていたいくらいのちょうど良い小旅行なんだ…。

「べるもんた」に乗って、沿線の人々の熱い思いに触れて、
そんなことを考えながら帰途につきました。

参考文献(鉄道ピクトリアル 2016年10月号 #923,「鉄道車両年鑑」P76~77)

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