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  JR九州 サハシ787形  2017/03/30 UP
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JR九州 787系 Bk10編成 つばめ 6両編成 
←門司港、博多E                 @西鹿児島→
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所属 鹿児島総合車両所  参照:JR電車編成表2000年夏版 撮影2001.4

−鉄道車両写真集−
 JR九州 787系 つばめ
787系 有明
787系 リレーつばめ
787系 AROUND THE KYUSHU

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  JR九州 787系 サハシ787-10  撮影2001、4  博多 

「つばめレディのインキュベータ」JR九州 787系 サハシ787形

2016年「ななつ星」に続く豪華な食堂車(E001-6)をもつ列車−JR東日本「トランスイート四季島」が電車で製作されましたが、
一般庶民が利用できる食堂車でJRのオリジナル電車となればサハシ787形が唯一の車両でした。

とはいっても ウェイトレスさんが出来たてのお料理を銀のお盆で給仕するスタイルのものではありません。
サハシという形式からもわかるように「ハ=客室(セミコンパートメント:4席×6室)」があり、
結果半室スペースとなった食堂には厨房はなく、ビュッフェとよばれる立席の軽食コーナーの傍らには車内販売準備室が設けられました。
車内販売の基地としての性格を持つものとも申せましょう。
しかし、決してチープなものではありません。
エッグラインと呼ばれる大きなドーム状の天井をもつこのビュッフェコーナーは列車の核ともいえる存在感を醸し出していました。
私はこのコーナーこそがJR九州の「ななつ星」を生み出したインキュベータ(孵卵器)であるとすら思っています。
そして、そこにあたたかい「熱」を送り込んだのは「つばめ」ではなかったかと思うのです。

さて、そのビュッフェコーナーでのメニューは弁当や飲み物だけではありません。
ホットメニューとよばれる軽食類が充実していました。
ホットメニューは、電子レンジで「チン!」するだけではありますが "つばめ゙"デザインの紙箱に入っており、
そのプレミアム感もあってか、味もなかなかのものだったように思えます。
また車販でも扱っている各種ドリンクやおつまみ類、スナック類も「つばめブランド」にコーディネートされており、
その徹底ぶりにはまさに"つばめ"に対する熱い思いを感じさせるものでした。

それでは。ここで「つばめ」についてお話しします。

特急「つばめ」は昭和5年に東京~神戸を結ぶ特急列車として誕生しました。(当時は正式には「燕」と漢字表記)
東京~大阪をそれまでの列車に比べて2時間30分も短縮する8時間20分で走破し、
「超特急」と呼ばれました。
スピードだけではありません。
食堂車、展望車を連結した豪華列車で、国鉄の花形特急として君臨していました。
かつての国鉄球団が「スワローズ」であったことは この花形特急の名称に由来していたのです。
しかし、スピードでは新幹線におよばず、「つばめ」はフラッグシップの座を「ひかり」に譲ります。
以後、新幹線が西へ西へと開業するたびごとに、その運行区間を徐々に西へと追いやられ、
晩年は岡山~西鹿児島の運行となってしまいました。
そして1975年には「つばめ」の名称は消滅してしまうのです。

しかし「つばめ」は死んではいませんでした。

国鉄きっての花形列車であったことから、平成4年にJR九州が「つばめ」の名称を使用するにあたって、
他のJR各社に事前に了解を取り付けたという話を聞いたことがあります。
それが噂であったとしても、それほどまでに重みのある名称だったことが伺えます。

JR九州はそんな「つばめ」の名称にふさわしい列車にするために787系を開発しました。
1992年7月から営業運転を開始するのですが、
787系は1992〜02年に日立製作所および近畿車輛でなんと計140両も製造されたのです。
JR九州のフラッグシップトレインとして、
鹿児島本線の特急「つばめ」全列車を787系に統一するためです。
こういってはなんですが、485系の「つばめ」などありえないのです。

とはいえ、787系の足回りは最新最速のものではありません。
近郊電車である811系の走行システムをベースに開発されたものです。
「つばめ」に求められたのは、ゴージャスな旅を演出する快適な移動空間です。
デザインは水戸岡鋭治氏が率いるドーンデザイン研究所が手がけました。
車両デザインの素晴らしさや落ち着いた車内の雰囲気は定評のあるところです。
そして注目すべきは、「つばめレディ」と呼ばれる客室乗務員の制服にまでそのコンセプトが及んでいることです。
というのもほかではありません。
いかに優れたモノがあっても、いかにユニークなアイデアがあっても、それを生かすも殺すもつまるところ人間なのです。
もちろん制服だけで優秀な人材を集めることなどできませんが、
エレガントでスマートなあの「つばめレディ」の制服こそが、スタッフの志気に大いに影響したのではないでしょうか。
彼女たちお仕事は、単にビュフェでの軽食の提供などにとどまりません。
名列車にふさわしいサービスとは何か。それを高いレベルで常に追求していたように思われます。
彼女たちの思いは参考文献でもある「九州レール・レディ」をご覧いただけたらおわかりいただけるのではないでしょうか。

そんな上質な彼女たちの「おもてなし」に魅せられて、
「JR九州にまた乗りたいな。」と思ったのは私だけではないと思います。

そんな彼女たちの出発点が、サハシ787形なのです。

2004年3月 九州新幹線新八代〜西鹿児島間開業にあたり、
博多~西鹿児島間を結んでいた787系特急「つばめ」は、博多〜新八代間の新幹線連絡特急「リレーつばめ」とその姿を変えます。
そして、サハシ787形は、全車、ビュッフェを座席化改造し普通車となり、形式消滅してしまうのです。

登場からわずか10年という短い生涯でした。

しかし、ここで巣立った「つばめレディ」たちは、卒業後「ゆふいんの森」で素晴らしい活躍を続け、
その熱い思いは、あの豪華列車「ななつ星」の客室乗務員へと引き継がれてゆきます。



サハシ787形は、サハ787形200番台に改番され、ビュッフェは普通客室に改造されましたが、
その象徴であったエッグラインの大きなドーム状天井はそのまま残されています。



参考文献:鉄道ピクトリアル 「新車年鑑1993年版」 1993年.10月 No582 の記事
「九州レール・レディ」メディアファクトリー刊  奥村美幸著(JR九州、客室乗務員)2008年10月

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