2014/02/16 UP | ||||||||||||||||
のHP TOPへ | ||||||||||||||||
J鉄局TOP>珍車ギャラリー>JR北海道 キサロハ182 550番台 哀しきダブルデッカー キサロハ182_550番台 (JR北海道)JR北海道 キサロハ182-550番台は、ダブルデッカーのグリーン/普通合造車です。特急「スーパーとかち」用として1991年に4両が日立製作所笠戸事業所で製作されました。 2014年現在、今もキサロハ182-550番台はJR北海道に在籍します。 ところが、なんと10年以上も使用されることもなく、ずーっと放置されているのです。 前年に製作されたダブルデッカー、ジョイフルトレイン「クリスタルエクスプレス」用キサロハ182-5101と車体構造は変わりません。 こちらは、ばりばりの現役で、「フラノラベンダーエクスプレス」として使用される傍ら、 この年末年始にも臨時特急「北斗86号95号」として活躍しました。 この違いは何なのでしょうか? まずはベースとなるキハ183系とはどういう車両なのか。 そこから見ていきたいと思います。 §1 キハ183系キハ183系は、国鉄時代、北海道地区で活躍していた特急用気動車キハ80系(1961年〜)を淘汰すべく1979年に登場しました。(キハ183系先行試作車) 先頭車であるキハ183形式は、非貫通の高運転台となり、堂々たるスラントノーズは、他に類の無い独特のデザインで、 今なおその勇姿を見ることができます。 しかし、長大編成を基本とするそのスタイルは時代の流れにそぐわず、 分割・併合運転を可能にした貫通型の先頭車をもつ2次車が登場することになるのです。 N185系とも呼ばれるこの500番台グループが登場したのは国鉄末期の昭和61年のことでした。 新生JR北海道の経営基盤を盤石にするためにもN185系には、大幅なテコ入れがなされました。 アコモ改良はもちろんのこと、高速化を目ざし高出力エンジンを搭載、台車も刷新されました。 加えて前述したように、N185系の先頭車は貫通形となり、従来とは全く異なるスタイルとなりました。 JR四国に承継された185系気動車を彷彿させるそのスタイルからしても、 N185系は旧185系とはもはや別系列と言ってよいものだと思われます。 550番台は、そんなN185系(500番台)の改良型でNN183系とも呼ばれます。 JR移行後の1988年3月のダイヤ改正において函館本線で最高速度 120 km/h 運転を行うため製作されました。 搭載されたエンジンはDML30HZ(660PS/2,000rpm)。 500番台のDML30HSJ(550PS/2,000rpm)を上回る強力なパワーを誇ります。 キサロハ182-5101もキサロハ182-550番台もこのグループに属します。 ただ、2階建てですから、台車間に1階部分が入り込む構造となります。 当然のことながら駆動用エンジンは搭載できませんので付随車となっています。 つまり高出力エンジンの仲間がいるからこそのキサロハと申せましょう。 そして彼らが最後のキハ183系車両となるのです。 §2 ジョイフルトレイン キサロハ182-5101キサロハ182_5101については、珍車ギャラリーですでに取り上げています。思えば、同じ形式の車両を別タイトルで取り上げるのははじめてのことです。 しかし、キサロハ182-5101とは登場した経緯もその外見も全く異なります。 彼女はジョイフルトレインと呼ばれる。鉄道車両です。 ジョイフルトレインは、単なる移動手段ではなく、 列車に乗ること自体を楽しんでもらおうというコンセプトのもと企画開発されたものを指します。 国鉄からJRへ移行期には、多くのジョイフルトレインが登場しました。 余剰車両の有効利用と新たな需要を掘り起こすためです。 ですから当初は旧型車のリニューアルというのが定番で、 あのスマートなデザインの「フラノエクスプレス」も、かつての特急用気動車キハ80系の改造車です。 これに乗車したことのある私は、このカッコよさに似合わぬ「足の遅さ」がっかりした経験があります。 でもスキーウェアに身を包み、札幌から富良野へと向かうこの列車の中で私は非日常感を満喫しました。 リゾート列車に本腰を入れるJR北海道は、改造車のみならず新車を投入します。 種車がなくなってきたということもあるでしょうが、 高密度かつ高速化してゆく本線の列車の足手まといになることは避けなければなりません。 「クリスタルエクスプレス」は、石勝線方面へむかうリゾート列車としてデビュー(1989年)しました。 「ニセコエクスプレス」と同様、新製された足回りはNN183系に準じており、 最高速度は120km/hを確保しています。(ニセコエクスプレスは130km/h対応) この列車のコンセプトは、”北の大地は全周視界”つまり「展望のよさ」がウリです。 先頭車であるキハ183形は、運転室を2階にあげた名鉄パノラマカースタイル。 中間車のキハ182形もハイデッカー構造に加え、屋根肩部に天窓を設けた「ドームカー」となっています。 キハ183-5101 - キハ182-5101 - キハ183-5102の3両編成で登場したのですが、翌1990年。 これに加えて2階建てのキサロハ182-5101が増結されることになったのです。 ラウンジも設置され、ジョイフルトレインとしてのコンセプトが鮮明に出ています。 まさに編成の核となるイメージリーダーとしての位置づけです。 §3:スーパーとかち キサロハ182-550番台キサロハ182-550番台は、定期列車である特急「スーパーとかち」用に製造されました。当列車では編成中に付随車キサロハ182形を含むことから、 編成全体の機関出力を補うためNN183系(キハ182形550番台)をメインに編成を組んでいます。 ここに彼らが550番台を名乗ることの意味があります。 運転を始めたのは1991年7月からですが、2階建車両「キサロハ182形」を組み込んだことから 従来の「とかち」と区別するため、「スーパーとかち」とその名を改めました。 ところで、なぜダブルデッカーを定期列車に組み込む必要があったのでしょうか。 それは石勝線方面のリゾート開発が進み、現有のジョイフルトレインでは対応し切れないという読みがあったからです。 ジョイフルトレインの定員はしれています。増発するにしても十分な効果を期待できません。 またジョイフルトレインの多くは旧型車の改造車でもあり、もはや高密度の千歳線の線路容量を考慮すると、 在来の定期列車である特急「とかち」に付加価値を加え、リゾートタイプの新車を併結することが効率的だと考えられたのです。 これならばリゾート法の適用を受け、国からの支援を受ける可能性もありです。 ところが、なんということでしょう。「スーパーとかち」がデビューを果たしたその直前に、バブルは崩壊。 一気に景気は冷え込んでゆきました。 リゾート輸送に活路を見いだしていたJR北海道は、進路変更を余儀なくされるのです。 9年後の2000年3月。 JR北海道は、キハ283系を投入し、同系を使用する1往復を「スーパーとかち」としました。 対して従来のキハ183系による「スーパーとかち」は2階建車両連結車を含めて、すべて「とかち」に改められることになったのです。 最新の振り子装置を搭載した283系で時間短縮をアピールしたいJR北海道としては、 「スーパー」の名をこちらに付けるのは当然の流れでしょう。 加えてキハ183系「おおぞら」にもキサロハ182-550番台を連結。 あの大きな「SUPER TOKACHI」のロゴもそぐわないものとなり、 キサロハ182-550番台はその看板を下ろすことになります。大型ロゴは「HET183」に変更されました。 翌2001年7月。283系「スーパーとかち」が増発されるのに及んで 「とかち」は、キサロハ182-550番台の連結を終了しました。 そして、以後10年以上もお役御免となっているのです。 §4 検証 キサロハ182-550番台ところで、2階建てのメリットとは何でしょう?2階建てといえば、近鉄のビスタカー30000系が思い浮かびます。 その定員は1階が12名、2階が64名です。 そしてE4系MAXの2号車E455形に至っては133名です。すごいですね。 そうです。メリットの一つは座席定員をUPできることです。 E4系の場合、8両編成を2本連結した16両編成時は、なんと定員は1,634名となります。 高速車両としては世界最大となるこの定員数をもって、新幹線通勤(通学)輸送の混雑緩和に寄与しています。 同じJR東日本の在来線用ダブルデッカー215系も座席定員の確保を目的に作られています。 さて、キサロハということで、グリーン席と普通席が混在するわけですが、 キサロハ182-5101は2階が、4人用のボックスシートで普通席(×7BOX)。 1階が4人用のグリーン個室(3室)となっています。よって定員は計40。ただしこれにはラウンジ2カ所分の座席は含みません。 対してキサロハ182-550番台は2階が、2×1のグリーン席でこれを10列×4列で計24席。 1階には2人用普通個室を5室備えていますから定員は併せて34ということになります。 グリーン室付きですから単純には比較できませんが、キサロハ182-550番台は、いかにも定員数が少ないのです。 次に挙げられる2階建てのメリットは展望のよさでしょう。 ビスタカー30000系の、なかでもビスタEXとなってからの2階部はドーム状の連結窓になっており開放的な見晴らしを楽しめます。 一方、どう見てもキサロハ182-550番台は展望をウリにしているとは思えません。 画像をご覧ください。見晴らしのよい2階席の窓がいかに小さいことか。 こちらのサイドは一人がけの座席側で、座席は4列。よって窓も4人分しかありません。 反対側にしても10列分の窓スペースしかないのです。なんともったいない。 加えて、キサロハ182-550番台の座席上には荷物入れのスペースが設けられており、写真を見る限りでもすごい圧迫感です。 窓際ならいざ知らず、通路側の座席だったらグリーン料金を払う気にはなれません。 ということで、キサロハ182-550番台は、2階建てであることのメリットを活かしきっていないように思われます。 いや、ちょっと待ってください。 ダブルデッカーにしかないものがあります。それは存在感です。 E4系は、その独特なフォルムからしてその空力性能の非凡さを感じさせるものであり、 ホームにたたずんでいるときでさえ、その存在感に圧倒されます。 しかし、そのサイドビューについてそれが洗練された美しいデザインかといえば、どうもそんな感じはしないのです。 30000系ビスタカーにしても、よく考えられた機能的な2階建て車両という点ではすばらしいの一言につきるのですが、 ことデザインについていえば、キサロハ182-550番台に軍配が上がるように私には思われるのです。 そうです。キサロハ182-550番台において、活かされていることがありました。その存在感です。 列車のイメージアップにダブルデッカーであることが大きく貢献していたことは間違いありません。 両側面に「SUPER TOKACHI」の大型ロゴが入っていますが、私はそんなことを言っているのではありません。 キサロハ182-550番台の車体自体のの美しさにご注目ください。 (ちなみに私のお気に入りは、下に示した2階部の窓が大きいサイドです。) 2階建てであることで、その存在を主張しながらも、どこか控えめで清楚なたたずまいは編成のなかに見事になじんでいるように思えます。 さわやかな色合いは「スーパーとかち」の認知度を一気に高めたに違いありません。 それだけに… 「スーパーとかち」から身を引くことは、彼女自身の存在感を失わせることになったのではと思われるのです。 参考文献 鉄道ピクトリアル 特集キハ181.183.185系 No772 2006.2 「グリーン車の不思議」佐藤正樹 交通新聞社新書 2012.8 鉄道ピクトリアル 新車年鑑 1992年版 no566 1992.10
|
||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
のHPです |