2014/12/15 UP のHP | |||||||||
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−今、JR北海道に必要なもの キハ160形 Innovative Technology Train −
JR北海道 キハ160は日高本線用として、1997年3月に製作されました。 事故で廃車となったキハ130の補充車両としてですから、1両しか製造されませんでした。 JR北海道では、1993年にキハ150を登場させており、これを日高本線に充当しても良さそうなものですが、そうはなりませんでした。 これは日高本線の特殊事情というよりも 、富士重工製のキハ150に対抗して新潟鐵工所がその存在感を示しておく必要があったからとも思われます。 そんなわけで、メーカーである新潟鐵工所の " NDC " をベースに、キハ130形を改良した設計がなされています。 エンジンはN-DMF13HZF×1 (330 ps / 2,000 rpm)。 DW20 を経て、2軸駆動の動台車 N-DT150 をドライブします。 キハ150の450psより出力は控えめです。 日高線に配置され、1997年6月より, キハ130と共通の運用につきました。 キハ130が全車廃車となった2002年以降は、キハ40形350番台とともに使用されることになります。 しかし1両のみの異端車は、やはり現場では扱いにくかったのでしょう。 2007年にハイブリッド試験車両 " ITT " に改造されることになりました。 " ITT "とは Innovative Technology Train の略です。 ちなみに Innovativeとは「刷新的な, 進取の気概に富む」ということですが、JR北海道では何を目指していたのでしょうか。 それは、モータとディーゼルエンジンを搭載し、各々直接動力に関わるパラレル方式ハイブリッド方式の実用化です。 双方のパワーユニットを上手に用いることで動力効率の向上させ、 かつこれらを低廉なコストでの実用化する目的で開発されました。 あわせて環境性能を充足させることにも重点が置かれました。 モータ・アシスト式 (MA) ハイブリッドとも称するこの方式の鍵となるのが、 ハイブリッドアクティブシフト変速機 (Hybrid Active Shift Transmission, =HAST) です。 HAST は運転状況に応じて電動機・エンジン・出力軸の接続を切り替えます。 @発車時(Aモード) HASTは電動機と出力軸とを接続し、 電動機のみで車両を起動します。(エンジン動力は切り離され、起動には関与しない。) A力行時(B モード) HAST はエンジン動力と出力軸とを接続し、 車両はエンジンと電動機との動力を併用して加速を続行します。 B惰行運転時(Cモード) HAST は出力軸への動力伝達を切り離し、エンジンと電動機とを接続します。 電動機は、エンジンを動力とする発電機として動作し、発生した電力をバッテリーに充電します。 @減速時(Dモード) HASTはエンジン動力を切り離し、出力軸と電動機(発電機)とを接続します。 下り勾配や停車のための減速時、電動機を発電機として動作させるため、 輪軸からのバックトルクが 最終減速機 → プロペラシャフト → 逆転機 → HAST の経路で伝達され、 発生した電力はバッテリーに充電され、エネルギーを回収します。 この方式ではエンジンの使用が惰行運転時の発電及び一定速度到達後の加速時に限られるので、 効率のよい高回転数を維持したままで駆動できます。 このことで騒音や排気ガスを低減できるというわけです。 しかし、これらの動作を運転室からの指示によって行うとすれば、かなり煩雑です。 各装置は専用の制御装置 (Hybrid Transmission Control Unit, H-TCU) によって制御され、 運転室からのマスコンやブレーキハンドルの操作に応じて、エンジンの始動と停止、 エンジンや電動機とのクラッチ断続、逆転機の断続などを統合的に自動制御することにしました。 参考サイトである、開発元の「日立ニコトランス」のHPでは、 「自動車で採用されているハイブリッドシステムを鉄道に適用するため、北海道旅客鉄道(株)殿と共同で開発しました。 HASTドライブは、高効率なアクティブシフト変速機とモータを組み合わせています。 鉄道の場合は、運転パターンを予測可能なことから ハイブリッドシステムのメリットを自動車以上に発揮できる効率的なエネルギー管理を行えます。 更に、駅構内ではモータのみを使用するため、駅騒音を低減できるメリットもあります。 従来技術では実現できない高いレベルでの動力性能と環境性能の両立を可能にしています。 HASTドライブを搭載した“ディーゼル・電動パラレルハイブリッド鉄道車両の開発”が世界鉄道研究会議2008で最優秀論文賞を、 2009年に第36回環境賞の優良賞を受賞しています。」 とあります。 まさに、バラ色の新時代を担う夢のテクノロジーであるように思えます。 しかし、JR北海道では、キハ160形を量産することはありませんでした。 ローカル線の気動車は国鉄時代の遺産であるキハ40形を手直しすることで当面まかなうことになりました。 なぜでしょう? それどころではなくなった。というのが実際のところだと思います。 北海道新幹線の工事が本格化し、在来線でも「とかち」の全列車スーパー化など推し進めた一方で、悲しい事故が起こりました。 2011年5月の「石勝線特急列車脱線火災事故」です。 奇しくもキハ160形がハイブリッド改造を受けたその年に就任された代表取締役社長の中島尚俊氏は自殺されました。 社員宛ての遺書には石勝線火災事故に触れたうえで安全意識の向上を社員に促す、といった文面がつづられていたそうです−−−−。 しかし、その後も事故、不祥事が合いつぎました。 いつしか、キハ160形は苗穂工場の片隅に追いやられ、ひっそり2013年12月廃車されました。 今、JR北海道に必要なものは何でしょう。 私はやっぱり「夢」だと思います。 JR北海道発のテクノロジーが、日本のみならず世界中の鉄路を駆け巡る。 そんな夢がよみがえってくれることを私は期待します。 −−−−−−もう非難はたくさんです。 参考サイト、「日立ニコトランス」のHP 参考文献 鉄道ピクトリアル 「鉄道車両年鑑 2008年版」 2008年10月号 No810 |
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