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  動力付き客車−JR東日本 SL銀河号 キハ141系700番台−

JR東日本 SL銀河号 キハ141系700番台
−鉄道車両写真集−
JR東日本  SL銀河号 C58形+キハ141系700番台
JR北海道 キハ141系
 キハ141形+キハ142形 0番台  200番台
 キハ143形 100番台  150番台 
 
キサハ144形 100番台  
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JR東日本 SL銀河号 撮影2014年8月 花巻駅

キハは気動車です。本来、自力で移動し、他の動力車と連結することはまずありません。
しかし、この2014年にデビューした「SL銀河号」のキハ141系は、SLと力を合わせて山を登り、時にはSLを牽引して移動するのです。
この頼もしいというか、今まであり得なかった気動車が今回ご紹介するキハ141系です。

2014年にデビューしたと記しましたが、実際は中古車を改造したものです。
JR東日本が、JR北海道から購入した中古車両というのもおもしろいところですが、
まずは、その生い立ちから、お話を始めましょう。

キハ141系はJR北海道が1990年から札沼線用に投入した車両です。
51系客車(オハフ51形)を改造して製作された−もと客車−の気動車で、−動力付き客車−と表現されることもあります。
これも、珍しい例ですね。
もっとも国鉄時代から客車を気動車化した改造例はあり、JR西日本でもキハ33形などがこの例になります。
しかし、いずれも少数です。
合計44両も量産され4形式ものバリエーションがあるキハ141系は例外的存在というべきです。

では、なぜこんなにも大量に改造されたのでしょうか?
それは、沿線が急速に都市化した札沼線(学園都市線)の輸送力増強が急務であったということと、
一方でその時51系客車が大量に余剰となっていたことがあげられます。
新製の気動車が導入できれば、それにこしたことはなかったのですが、
それでなくても経営環境の厳しいJR北海道にそんな余裕はありませんでした。
つまり、JR北海道のフトコロ事情が、生み出した車両といえるかもしれません。

JR西日本のキハ33形と同じく、種車の車体を極力有効利用し車掌室を運転室としました。
キハ33形では客用扉の移設がなされましたが、キハ141系では種車のものをそのまま用いています。
もっとも、気動車化したのですから、床下は大きく変化しました。
駆動用エンジン・変速機などの走行機器が設置されただけでなく、台車も気動車用のものに振り替えられました。
また車内はラッシュ時のことを考えて、ロングシート部分を増設しました。
セミクロスシートであることは変わりませんが、座席を3列化(2列+1列)しています。
それでも、見た目客車です。

さて札沼線は、2012年に電化され、キハ141系は働き場所を失ってしまいました。
JR東日本は、これを「SL銀河号」の客車に抜擢することにしたのです。
気動車とはいえ、もと客車なのですから、エンジンを取っ払えば、新たに客車を製作する必要はないわけです。
いや、JR東日本は、そのまま、気動車として導入しました。
つづけて、そこんところの事情をお話します。

さてこの列車が走る釜石線は、おおむね長閑なローカル線です。
ところが、足ヶ瀬−陸中大橋間だけは別格です。
スイッチバックがあるわけでも、路線がループしているわけでもないのですが、屈指の山岳路線となっています。
私も何度かこの区間に乗車しましたが、この区間ばかりは、寝ては損とばかりに、私は必ず先頭の立ち見席に陣取ります。
そしてその鉄路に熱いまなざしを注ぐのです。
陸中大橋を出た列車は、ほどなくトンネルに入るのですが、ひたすら左へ左へと曲がってゆきます。
ちょうどループ線のトンネルのようです。トンネルを出たら左手に今走ってきた線路を見下ろすことができます。
スイッチバックこそはしませんが、それに近い高度差です。そして、今度は右へ右へとカーブを切ってゆくのです。
地形図を見ていただければ、一目瞭然ですが、
次の上有住駅まで直線距離にして5km足らずのところを8.3km。時間にして  分かけて登ります。
こんな区間がある釜石線にSL 列車が、それも中型機であるC58が走ると聞いて、私は正直、耳を疑いました。
釜石線では1989年から「SL銀河ドリーム号」としてSL列車が運転された実績はあります。
しかし、一回り大型のD51-498でも力不足という理由で、2両のDE10形ディーゼル機関車を補機として連結し運転したほどです。
ですから、気動車と協調運転するんだと聞いて、「さもあらん」と思ったわけですが、同時にこんなのアリか?と信じられませんでした。

協調運転といえば、真っ先に思い浮かぶのが碓氷峠です。
EF63形電気機関車と169系や489系電車などが力を合わせて峠に挑みます。
もはや見ることもなくなった異種混結ですが、これとて動力源はともに同じ電気です。
双方に運転手が乗務し、無線でやりとりしながら動力のオンオフを行うのです。
まあ、思えば、SLでも重連とか後補機でもって出力不足を補うことがありました。
本務機の「ボーッ、ボ、ボ。」という汽笛が絶気(パワーオフ)の合図です。
うーん懐かしいなあ。−−それはさておき、SL銀河号ではデジタル無線でやりとりをします。

閑話休題−−−
さて、前述のように
機関車単機では釜石線の陸中大橋駅 - 足ヶ瀬駅間の上り勾配区間での走行が困難であることから、
気動車と協調運転することにしたのですが、JR東日本には適当な気動車が見当たりませんでした。
かりにキハ40系を使用するにしてもイメージが違いすぎます。
12系客車を気動車化する手もありますが、そんな手間をかけずとも、すでに気動車化された車両が、JR北海道にいるではありませんか。
時、折しも札沼線電化に伴い余剰となったキハ141系です。
偶然とはいえ、本当にJR東日本はいいところに目をつけたのものですね。

そんなわけで、キハ141系のうち4両をJR北海道から購入し、「SL銀河号」専用車に改造して使用することにしたのです。
これら(キハ142-201、キハ143-155、キサハ144-101、キサハ144-103)4両は2012年11月、郡山総合車両センターへ配送され、
2014年1月に改造工事が完了しました。
これが、キハ141系700番台です。

丸一年以上かかっているんですね。
気合いの入った改造だということがしのばれます。

なにせ、前代未聞のSL-DCの協調運転です。

釜石線での勾配区間では、SLの機関士に加えキハ141系の運転室にも運転手を乗務させて、デジタル無線でやりとりをする
と前述しましたが、保安装置も昔とは違います。
JR東日本のATS-Ps形に変更された以上、協調運転を行うためには、特別な配慮が必要です。
言ってみれば、常時追突している様なものですから、キハ141系には、ATSの切替連動スイッチが必要です。
すなわち先頭の機関車のATS電源がオンで、牽引される立場のキハ141系のATS電源がオフの状態でも、
キハ141系の制御器によるノッチ進段を可能としなければならないのです。
そのためにキハ141系にはKE100形ジャンパ栓をとりつけ、SLの動輪から検知した軸温を取り込み
キハ141系方のパソコンで軸温の監視を行うということをやっています。
これにより力行している機関車と連結していると認識、「SL補機」の表示灯を点灯させます。
かくして運転手は、これを確認。スイッチオン→ノッチオンとなるのです。

(なおブレーキについては、特別なことはありません。
機関車の自動ブレーキ弁により、キハ141系のブレーキが制御されるため、運転手によるブレーキ操作は行わないようになってます。)

非冷房車だったキハ142-701はエンジンがDMF13HZE (300PS×2)に換装されています。
加えてこの走行用エンジンには、発電機を取付、自車用に冷房電源を供給します。
イベント列車に冷房なしというわけにはいきません。

ところでSL運転に必要なものは何でしょう。それはターンテーブルです。
運転台が車両の真ん中にありそれでなくても見通しの悪いSLです。
C11形のような小型のタンク機なら、いざしらず。
C58形のようなテンダー機は、炭水車が邪魔ですから、いちいち向きを変えてやらなければならないのです。
SL銀河号の基地は盛岡です。
釜石線に入線する場合は花巻駅でバックしなければなりません。
しかし、起点である花巻駅にはターンテーブルがないのです。
ここで、役に立つのが、キハ141系700番台の運転台です。
これを活用すれば、SLを釜石側に向けたままの編成で、そのまま盛岡から引っ張ってこれます。
そうすれば、機関車を付け替える手間もありません。

キハ141系700番台が役に立つのは、山ばかりではないのです。

車内も当然大きく変わりました。
内装はモダンな大正・昭和ロマンの客室に変身。
オープンスペースにはプラネタリウムをを設けました。

また、キハ142-701を除く3両は、花巻方の客室扉が撤去されました。
そして、そこには銀河を彩る星座の姿が…。
釜石線は、作家・宮沢賢治(明治29年〜昭和8年)出生の地−花巻−が起点です。
また釜石線が「銀河ドリームライン」と名付けられたのも彼の代表作「銀河鉄道の夜」にちなむものです。

キハ141系700番台は、まさに釜石線のために用意されたスペシャルな車両なのです。

それにしても、なぜ釜石線でSL列車なのでしょう。
それは、次回、C58-239のところでお話しします。


 参考文献 鉄道ピクトリアル 「鉄道車両年鑑 2013年版/2014年版」 2014年11月号 No881/





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